新たなる始まり
黒い影は、まりなを路地裏に追い詰める。 「あなたのような強い女性の泣き叫ぶ姿が好きでねえ〜」 微笑しながらナイフの刃を指で軽くこする。 「さて〜あなたは、どのくらい楽しませてくれるでしょうか・・・」 「ふっ 試してみる?でもあたしって結構〜頑固だからご期待には添えないかも」 強気な台詞を吐きながら まりなは愛銃イクイクを構える、 しかし発言とは裏腹に拳銃を持った手は微か(かすか)に震えていた。 (落ち着くのよ まりな・・・) そう思った瞬間 黒い影は容赦なく まりなの後ろにすばやく回込む。 (はっ早い・・・) 銃のトリガーを引く事すらできなかった まりなは、 苛立ちと同時に底知れぬ恐怖を感じていた。 ![]() 「君と私では戦闘性能が違いすぎるのだよ」 黒い影は、にやりと笑う。 「昔のロボットアニメの見すぎじゃないのあんた・・・」 まりなは、鼻で笑う。 「???」 黒い影は、何のことか解らず少し考えるような素振りをみせる。 (今だ〜!!) まりなは、迷わず引き金を引く! 「甘い!!」 黒い影の姿が幾重にも残像し体勢を後ろにのけぞらせながらこう叫ぶ。 「マトリ○ス!!!!」 銃の弾を 見事なまでに交わす黒い影に まりなは、 「くそ〜落ちろ!!!!」 どこかで聞いたような台詞を叫び メチャクチャに打ちまくる。 「カチッ」 (あっ やばっ 全弾打ちゃった) ホールドオープンするイクイクを見つめながら 固まっている まりなに黒い影は迫る。 (もうこれまでね・・・おじ様、少し早いけどあの世での再会できるかしら・・・) まりなは、苦笑しながら死への恐怖をまぎらわすかのように思った。 「ほう〜まだそんな笑う余裕がありましたか・・・」 そう言いながら黒い影は、まりなの首にナイフを当て少しずらし傷をつけた その傷口から微かに鮮血がにじみ出し まりなの白い肌を赤く染める。 (やだ・・・私・・・まだ死にたくない〜) そう思い始めたまりなの頭の中に 死んだはずの源三郎の声がした。 「法条さん あなたは賢い女性だ、だから決して諦めたりしてはいけませんぞ」 (そうよ任務達成率99%の法条まりなが、こんなことで諦めたらおじ様に会わせる顔が無いわ) そう思った瞬間、黒い影に肘鉄を繰り出し見事にヒットする。 しかしもみ合いの最中、まりなの手首に鋭いナイフの牙が襲いかかる。 「くっ」 まりなの表情は苦痛に歪み 手首を押さえながらバランスを崩してその場に倒れる。 「その怪我では、もう銃は打てまい〜」 血で染まったナイフを少し舐める黒い影を見てまりなは恐怖するが、 多量の出血のショックのせいか まりなはその場から動けない。 (いっ意識が薄れていく・・・駄目よ・・・まりな・・今・・意識を失っては・・・) 「だめ〜!!!」 病室内に響くまりなの声 「夢なの?・・・」 現実の世界に戻ったまりなは、手首から解けかけていた包帯を見て呟く 「私・・・まだ生きてるんだ」 自然と窓に目を向ける まりな (青い空・・・・・) まりなは、数分間思考能力を停止させた。 「まりな君〜」 (聞き覚えのある声・・・) 自らの思考能力のピントを病室の入り口付近に合わせる 「よっ!」 軽いノリの突然の来訪者 ![]() 「な〜んだ 本部長か・・・」 「せっかく見舞いに来たのに その言い方は無いだろ・・・」 「ゴメ〜ン私が悪かったわよ」笑って謝るまりな 「あと二週間ぐらいで退院できるそうじゃないか〜良かったね〜」 「でも 私・・・もう戻れない今の職場に」 「また〜どうして?」 「武器を使えない正義の味方じゃ洒落にならないわよ〜」 両手を上げて降参のポーズをとって見せるまりな 「何も 銃ばかり腕ばかりが、武器とは限らないだろう?」 「それに リハビリを根気強く続ければ良くなるって医者も言ってたし」 「気休めね・・・もう完全には直らないって言われてるのよ私の利き腕」 少し口調を強めて まりなは答える。 「まりな君にしてはずいぶんと弱気なこと言うね〜もしかして落ち込んでる?」 「そうかもね・・・もう私・・・」 と、まりなが弱音を言いかけた時、本部長の口から予想もつかない言葉がでる。 「こないだね〜 ある人間をスカウトして来ちゃったのよ〜」 そう得意そうに言いながら指で軽くひげをこする本部長にまりなは、 「キッパリ断られた・・・」 っと、呟く 「どっどうして解るのかな〜まりなくんもしかして君って超能力者?」 まるで心を見透かされた浮気亭主のように本部長は言う。 「そんなこと解るわよ〜こんな人の荒ばかり探すような仕事を引き受けてくれる人間なんてそう居ないわよ」 「それにこの仕事を やっていく人は精神的にも強い人間じゃなきゃ駄目なんだから・・・」 まるで教官が新米の生徒に語るような面持で答えた。 「じゃあ まりな君はそれに該当する人材ということになるよね〜」 そう言いながらにっこりと微笑む本部長に 「そっそう言うことになるわね・・・・?」 予想外の言葉にうろたえながら答えるまりなだった。 「早く怪我を治して現場に復帰したまえ まりな一級捜査官!!」 突然本部長は大声で、まりなに激を飛ばした。 その直後、病室の扉が開き そこから少し年齢の高そうな看護婦が、 不愉快そうな表情をもろに顔に出して入ってきた。 「病室内は、静かにしてください!!他の患者の迷惑です!!」 「すっすいません〜」 さっきまでカッコよく激を飛ばしていた本部長は、態度をコロッと変え 怖そうな看護婦に情けない声で謝った。 その時まりなが、本部長を見て腹を抱えて笑ったのは言うまでも無い。 笑うな!と怒る本部長に手を合わせ謝るカッコをしながら まりなは、またふと窓の外に目をやる。 「おじ様、私・・・まだしばらく会えそうにないみたい。」 そう呟きながら「くすっ」と笑みを浮べる まりなだった。 続く・・・・ 次回予告 本部長ピンチで、まりなが叫ぶ「絶対許さない!!!!」 弥生ピンチで、小次郎が叫ぶ「弥生ぃ〜!!!」 タイトル「アフターサービスに、ご注意!!」(仮) |