ゲームのことを熱く熱く語ってくださった佐々木社長。次は、まだ誰も突っ込んだことのない(多分)アルファシステム創立の謎について語ってもらっちゃいました。
ていうか、赤裸々すぎ!赤裸々すぎですよ、シャチョー!

ちょっと暗くてごめんなさい。これも、味のれんの店内です。

かかっている店員さん用のTシャツは、なんとアルファの社員さんがデザインしたもの!…ていうか、何で(笑)?

店頭で購入できるから、キミもバイト気分を味わおう!

■開発までやっちゃう火の玉社長!?

「見回したらプログラマーが空いてなかったんで(笑)」

――前回のインタビューでは、芝村さんが「社長が『暴プリ』を遊ぶ日が怖い」なんて言ってましたけど、社長はもう『暴プリ』はプレイされていますか?

 まだねぇ、真剣に遊びこんでないんですよ。僕、ズーッと自分でムービー作ってたんで(笑)。

――社長がみずから作ってるんですか!?

 ドラマのシーンにテロップを入れるんだけど、ポリゴンが緻密すぎてソフト側でそれを入れると処理落ちしちゃうんで、先にムービー内に入れておく必要があって。で、そこは僕が作ってるんです。

――中身だけはよく知ってる状態ですね(笑)。

 そう(笑)。何しろセリフが面白いんで、音と合わせたときに、噴き出しながら作ってますよ。

――それにしても、何で社長みずからムービーを作ってらっしゃるんですか?

 それはねぇ、社内でムービーに一番詳しいのが僕だから。

――そりゃまた何でですか?

 昔、プレイステーションで作り始めた頃に、僕が自分で『ミスト』(発売:ソフトバンク)というゲームを移植したんですよ。アレ、ムービーが60分も入っ てて、サウンドもCDから直接鳴らす分だけで8時間、フルカラーインターレースの画像が1500枚入ってるんです。で、普通のプログラマーなら、ムービー 60分って聞いただけで2枚組にするところを、1枚に収めちゃったんですよ。それを作るのにしこたま苦労して経験を積んでるんで、ムービーについては社内 でも僕が一番詳しいんです。
 サターンでは、普通シネパック(編注:サターンで一般的に使われたムービーの規格)がムービーで使われるんですけど、βカムなどのアナログ素材だと汚く なっちゃうんで、キレイにするために独自のプログラム書いて最適化したフィルターを作っちゃいました(笑)。『ネクストキング』(発売元:バンダイ)も、 かなりキレイだって評判だったんですが、アレも自分でフィルター作っちゃった成果ですね。

――それ、普通はセカンドパーティの仕事ですよ(笑)。

 で、しばらく間が空いて、PS2の時代になった。まあこれからはポリゴンで直接動かせばいいや、って思ってたら、いろいろなエフェクトとか膨大な量の群 集シーンなんかはポリゴンでは厳しかったんで、『暴プリ』では、やっぱりムービーを使おうってことになって。ただムービーを作るだけじゃなくて、音や口パ クに合わせてテロップを入れる作業が発生したから、「仕方ない、これは自分でやろう」ってことで作業しました。今回は、主だった作業はそのテロップだけな んですけどね。

――佐々木社長が今でも現場の仕事を手がけているのは、やっぱり好きだからですか。

 僕らの仕事って、ひとつあたりのスパンが長いんですね。僕は仕事を取ってくる立場なんですけど、あまり次々と取ってきても手が回らない。そうすると仕事 と仕事の間がヒマなんで、その間にもいろいろとやろうかなぁ、って感じですね。例えば『幻世虚構 精霊機導弾』(発売元:SCE)のアメリカ版では、プログラマーもやってますよ。仕事が来たんだけど、見回したらプログラマーがみんな埋まってて空いてな かったんで(笑)。

――そんな理由で社長自らプログラミングを(笑)。

 いや、そのときにはもう現役からは退いてたんですけど、不思議なことに2年おきくらいにプログラミングの仕事をやってる(笑)。

――引退するのも難しいですね(笑)。

■ついに公開、アルファ・システムの謎!

「それはねぇ……聞かないほうがいいかもしれない」

――そもそもアルファ・システムを立ち上げたキッカケは何だったんですか?

 それはねぇ……聞かないほうがいいかもしれない(笑)。

――そんなこと言わないで教えてくださいよ(笑)。

 だって、話すと長いよ?

――お時間さえよければ、是非。

 僕は昔から、モノを作ったり壊したりするのが好きだったんです。小さい頃からずーっとモノを作ったり壊したりしてて、中学高校の頃には、爆薬まで作ったりしてたんですよ。

――ずいぶん物騒な学生だったんですね(笑)。

 うん(キッパリ)。結構物騒なこともやってましたね。火薬の作り方が分かれば、作ってみたくなるじゃないですか。それも、硝酸ナトリウムとか過酸化カリ ウムなんてのを、薬局で買ってくるところから始めるワケですよ。それをどうこうして……とやるわけですけど、これがなかなかうまく燃えないんですよね。最 終的には、材料が手に入らなくて精製を断念しましたけど。

――そりゃ燃えないほうが世の中のためですね(笑)。

 それでも諦めずに、とりあえず花火の火薬を使ってロケットを作ったりしました。でも設計なんてしてないから、なかなか飛ばなかったですね。家の裏の畑で試したときには、爆発で飛んだ土が二階の屋根まで上がりましたよ(笑)。

――立派な過激派ですよ(笑)。

 そのほかに電気系も好きで、高校時代にはアマチュア無線にハマったんです。そのアマチュア無線で、高校3年の頃に、今も一緒に仕事している山本と知り 合ったんです。山本は当時大学1年で、まだマイコンが一般的でなかった当時、もう自分で配線設計までしたワンボードマイコンを作っていたんですよ。僕はそ の頃に、山本との話などを通じて、「マイコン」というモノがあることを知ったんです。
 で、大学に入ったのを期に、MZ-80Kというマイコンを買ったんです。でもプログラムなんてのは分からなかったんで、山本に教えてもらいながら覚えて いきました。そうして覚えていって、大学でマイコンをやっている奴らに、電卓のジャンクをかき集めてキーボードを作ってあげたり、MZのベーシックを自作 のワンボードマイコンで動かすのに挑戦したりしてました。同じZ80のCPUで、同じ仕組みさえ作れば動くんですよ。

――ハード系にも強いんですか!

 当時のマイコンくらいは、設計図さえあれば作れますよ。もちろん、今のレベルのチップでボード自体を組み立ててなんてのはできませんけど。あんな小さいモノ、ハンダ付けもできないですよ(笑)。
 大学では、授業にも出ずにそういうことをしてましたね。

――無茶しますねぇ。スゴいなぁ……。

 で、MZを買った町の電気屋で、自分で作ったプログラムを見せびらかしたりしてたんです。そうしたら、ヤマハからその電気屋にヘルパーで来ていた中村さ んという方が、「コイツらの作ったソフトを、どうにかして売ろう!」と言い出したんです。そういう経緯でキャリーラボという会社ができて、僕らにソフト開 発を依頼してくるようになったんです。

――その頃作っていたプログラムは、もうゲームだったんですか?

 当時作っていたのは、アーケードにあったヤツに似たゲームとかですね。まあ、著作権とかあんまり定かじゃない時代だったから(笑)。それをキャリーラボの依頼で作ったり、雑誌の『I/O』に投稿したりしてたんです。
 何年か後には、学校を辞めてキャリーラボの社員になったんですが、その頃に作った中で一番ヒットしたのが『JET』というワープロソフト。5万円ほどす るソフトだったんですが、たしか5億円くらいの売り上げがあったのかな。8ビットのワープロとしてはベストセラーですね。

――当時としては、とんでもない数字ですね。

 PC-9801の台頭に合わせて16ビット機用のワープロソフトもいろいろ出たんですが、僕らの8ビット用のソフトの方が使い勝手は圧倒的に良かったく らいですから。辞書もフォントも入ってて、今Windowsの基本機能レベルのことはほとんどやってましたよ。メモリが64Kしかない8ビット機でワープ ロを走らせてたんですよ!
 でも、やっぱり8ビットでは辛くなって会社がジリ貧になって来た頃、サムシンググッドという会社が助け舟を出してくれて、資本出資してキャリーラボを救 うという話になった。でも僕らとしては、相談もなくそうなったことにガッカリして、辞めて仕事をしようということになったんです。
 で、その頃ちょうどハドソンからも誘いの声があって、いろいろ考えていたんですね。

――ハドソンとの繋がりはどこから?

 大学の先輩で、僕がコンピュータを教えた本迫という男が、ハドソンに入ってたんです。キャリーラボの危機はハドソンにも聞こえていて、本迫が上司と話して、熊本まで来て「ハドソンに来いよ」と言ってくれたんですね。
 でも、ハドソンの社員になるのもなぁ……と迷っていたら、今度はサムシンググッドの社長が、「ちょっと待て、お前らのためにキャリーラボに出資したの に、いなくなったら困る」と言ってくれて。いろいろ話し合った結果、独立するなら出資する、ということになったんです。
 で、ハドソンと坂本社長の板ばさみで悩んでいたんですが、実はサムシンググッドの社長とハドソンの当時の副社長が飲み友達で、何だかもうややこしい関係 で(笑)。結局、サムシンググッドと自分たちの出資で会社を作って、そこでハドソンの仕事を受ける、という複雑な形で、アルファ・システムが立ち上がった んです。

――なるほど、ここでようやくアルファ・システムの誕生ですね。

 長かったでしょ?(笑) でもまぁ、経緯を話さないと分かりにくい話なんですよ。

■即戦力の新人は、自分たちで作る!

「ちょこちょこでも成果が出ればいいなぁ、と思ってます」

――アルファ・システムは、入社試験も相当変わっていると聞きましたが。

 その辺は、成功哲学とかモチベーションの上げ方とか、企業向けのノウハウ本にあるような知識の活用ですね。こういうのは、若者を説得する場合なんかには重宝するんですよ。

――ウワサに聞くと、「ナスカの地上絵をどうやって書くか?」とかいう問題が出るとか。普通ではちょっとあり得ないですよね。

 カンニングしてもいいことにしてるんですよ。それも珍しいかな。

――他にも、ウェブ上でゲームクリエイタ―の教育制度を設けているのも、他には見られないことですね。

 『GAME-DOJO』ですね。まず、ゲームメーカーには、学校教育を真面目にやってるだけの人は必要ないでしょ。もちろん、学校教育も真面目にやって いて欲しくはありますけど(笑)。それより、何はなくともコレは凄い、っていう秀でた部分を持っていないとやっていけない。
 でも僕らは、それを今の学校制度の中での教育に期待していいの? 期待できないのなら、誰が教育するの? で、誰もいないなら、俺たちがやるしかないよ ね、ってことで始めたんです。忙しいけれど、ちょこちょこでも成果が出ればいいなぁ、と思ってやってます。

――ゲーム業界って、即戦力を求めているわりには、本当に現場で活躍している人が教えてくれる機会なんて、そうそうないですよね。

 いや、即戦力なんてまずいないんですよ。だから即戦力にするために、『GAME-DOJO』で事前教育をしているわけです。事前教育にして、慈善教育なわけですよ(笑)。

――アルファ・システムは、時折そういった「業界のために」的な活動をしていますよね。例えば『ガンパレード・マーチ』で使ったAIのソースを公開する、という話にしても、聞いただけでは「なぜ?」と思ってしまうんですが。

 例えば、10年前の大作RPGのソースを公開したとして、誰か損します? それと同じですよ。だって僕らは、もう次のことをやってるんだもん。

――とはいえ、あまりに新しいモノなので、ビックリしてしまいました。

 ただウチのサーバは凄く貧弱なんで(笑)、アクセスが多すぎるとすぐにパンクしちゃうんだよねぇ。『GAME-DOJO』って始めてからまだ一ヶ月と 経ってないけど、あそこだけでもアクセスカウンターが2万以上行ってますからね。

――内容的には、あまりひやかしで見るようなモノではないですよね。にも関わらずたくさんのアクセスがあるってことは、それだけ熱心な人が多いってことなんでしょうね。

 『GAME-DOJO』の場合、中身はBBSしかないのにね(笑)。例えば美術は、絵を投稿してそれに評価がつくスタイルになっているんですけど、あれ は結構いいシステムだと思っているんですよ。他にそういうことをやっているところってないですからね。見たり評価したりするには結構時間もかかるんですけ ど、あの中から少なくとも一人二人は業界に入れる人材を輩出しないとね。

■『暴プリ』ファンへのメッセージ

「アルファは一回で手放せるようなソフトは作らないゾ」

――今、社員の数はどのくらいなんですか。

 今、50人くらいかな。でも、営業は僕しかいない(笑)。

――それで営業が社長一人というのも凄いですね。

 営業の人間と開発の人間って、どこの会社見ても反発してるんですよ。だったら要らねぇや、って思って(笑)。
 もうひとつ、ウチのユーザー受けがいい理由のひとつに、開発が直接ユーザーサポートやってる、ってのがあるんです。これも、サポートの人間がいないからなんですけど(笑)。

――BBSで回答してるのがプロデューサー本人だったりしますからね(笑)。

 極端に言うと、ウチに遊びに来てくれれば、アルファのファンになってもらえるでしょ。で、そうなったら、次の作品も買ってくれる。だから、地道に続けていくしかないんですよ。

――東京にオフィスを置こうと思ったことはないんですか?

 東京に行こうと思ったこと、ないんですよ。熊本で育って熊本の大学に行ってたんで、東京に行かなきゃいけない理由がなかったんですね。まあ、ハドソンの 仕事のときには社員全員で北海道まで行ってましたけど。社員全員が派遣状態で(笑)。

――ちょっと気が早いですが、アルファ・システムと桝田さんが組んでの次回作はもう予定されてますか?

 桝田さんとは、ちょっと間が開きますね。

――『ガンパレ』『式神の城』とオリジナルが増えてきたので、ファンの中には、アルファ・システム&桝田省治チームはどうなるんだろう? なんて心配している人もいるようですが。

 いや、依頼があればウチはいつでもやりますよ。桝田さんに限らず、依頼次第では何でもやります。

――では最後に、『暴プリ』の発売を待っているファンの方に、何か一言。

 とにかく、ポリゴンモデルの演技と、三石さんをはじめとする声優さんの演技が絶妙にマッチしているから、その素晴らしいシーンの連続をぜひ見て欲しいです。
 あと、戦闘がアツい! このゲーム、ひと通りクリアするだけなら、そんなに大変じゃない。難易度を甘めに設定することもできるし。でも、アルファは一回 やっただけで手放せるようなソフトは作らないゾ、って言いたいですね(微笑)。ぜひ、何度もやって下さい。


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